Jリーグに移籍して来た外国人助っ人FWの中で、敵として本気で『怖い』と感じた選手が3人居る。
1人目は第一次柏時代のエジウソン。ピークを過ぎた外国人が大半を占めていた当時のJリーグにおいて、その本物のスピードと個人技は鮮烈だった。
2人目はガンバ時代のエムボマ。アフリカン特有のバネのような身体能力とパワーは、Jリーグの常識を遥かに越えていた。因みにエムボマは顔も怖かった。
そして3人目、この話の主人公・札幌時代のエメルソンである。
若干18歳(後に年齢詐称が発覚)のマルシオ・エメルソン・パッソス=エメルソンがブラジルの名門サンパウロから期限付きで札幌に加入したのは、レッズがJ2を戦うことになった2000年シーズン。
当時J2は、今と比べれば雲泥の差でテレビ放映が少なかった時代に、このエメルソンという若い選手が次々得点を量産している現状を、その大半は新聞や雑誌での報道記事からしか伺い見ることが出来なかった。故にエメルソンの全体像がわからなかった中で、とんでもないFW選手が昇格のライバルのひとつである札幌に在籍していることに、それこそ不気味な不安を抱かされていた。
レッズが札幌とJ2同士として初対戦することになったのは6月4日、駒場での第17節(本来は室蘭での第6節であったが、有珠山噴火の影響で延期された)。
ここまでエメルソンの得点数は、なんと「16」。・・・いくら2部リーグとはいえ、この試合数でこの得点数は、ハッキリ言って洒落になっていない恐るべき数字だった。
試合前から話題はエメルソン一色。「やばい」「そんなに凄い選手なのか」「どうやってうちの守備陣が止めるのか」・・・明らかに不安先行だった。しかし、不安がってはいられなかった。ましてや札幌とはこの時点で首位を争う同士。レッズは首位を守るためにも絶対に負けられない、勝たなくてはいけない状況だったのだ。そこに立ちはだかった唯一であり最大の懸念が、そのエメルソンだったのだ。
試合開始とともに、最大の武器である弾丸ドリブルを駆使して突進を試みるエメルソン。ここでレッズサポも恐怖先行のサポートが始まる。エメルソンのドリブルが開始される度に「ギャー!!来た来た!」「速ぇぇぇ!!」「やばいって!潰せ潰せ!!」。挙げ句は自分自身もエメルソンに対して思いつく限りの雑言暴言連発!「レッズをなめんなよゴルァ!!お前なんて仝◯☆〆Φで△◎〒▼♂@でΨ♯〆§●〆Ωだろボゲェ!!!!」・・・今から思うと、とんでもない言葉を吐き散らしていたと思う。でもそうでも言わなければ、簡単には恐怖心は取り除けなかった。それほど恐怖対象だったのだ。
レッズは、縦に速いエメルソンをサイドに追い詰めてはその進撃を制限するような守備体系を敷いていたように記憶している。これが功を奏したのか、エメルソンには評判通りの働きをさせなかった。レッズだって去年までトップリーグで戦っていたプライドがあるし、恐らくエメルソン自身も、これまで日本で対戦して来たチームとは一味違うと感じたと思う。そんな雰囲気がぶつかり合い、そして思うような動きが出来ないエメルソンは、イライラからなのかラフプレーを連発し、75分には2度目の警告を受けて退場してしまった。
あっけないエメルソンとの初顔合わせだった。・・・試合はその前にビジュに先制点をぶち込まれて、結局0-1で負けてしまったのだが・・・。
そんな、レッズがJ2で苦戦した原因の一端を担った憎き恐怖のエメルソンが、よもや翌年レッズに加入することになろうとは、その時は露ほどにも思っていなかった。
昨日の敵は今日の友。加入当初、果たしてJ1で通用するのかが疑問視されていたエメルソンも、J1デビューとなった駒場での広島戦では、途中出場ながら得意の突破を何度も試みては相手のファールを誘発させる衝撃のデビューを飾ったのだった。
それから数シーズン、当初は問題児視されていたエメルソンも日を追う事にレッズに馴染み、始めはボールを持ったら離さなかった彼の独り善がりのスタイルも徐々に解け、周りを使い使われるようになりながら確実に成長を続けていった。そして2005年途中まで、エメルソンはその進化とともに怪物ぶりをいかんなく発揮しては、相手チームに対して常に恐怖と脅威の対象となり続けた。彼自身も得点王やMVPという華々しい成績を残し、レッズに多くの勝利と、そしてついには初タイトルをもたらしてくれた。まさにレッズ躍進の歴史に欠かすことが出来ない選手となった。
残念だったのは、シーズン途中で不可解な形から「別れも告げずに」突然カタールリーグのアル・サドに移籍してしまったことだ。あの時は「オイルマネーに目が眩んだ」「代理人に騙された」「業を煮やしたレッズの方から放出した」などの様々な説が流れたが、今となっては真相は闇の中だ。
ただ、移籍したカタールでは年齢詐称が発覚して逮捕される騒動や、カタール国籍を取得するもユース時代のブラジル代表歴から同国代表入りを断念せざるを得ない状況に陥ったり、念願であった欧州移籍を果たすものの、移籍先のレンヌ(フランス)では不振を極めてわずか半年でカタールに戻るなど、日本を出たエメルソンのその後は、決して華々しいものではなかったように思える。
そんなエメルソンが、今年3月から母国で再出発を果たした。
10年振りにブラジルに復帰した彼の移籍先は名門フラメンゴ。ここで彼は同じく母国リーグに復帰した元インテルの”怪物”アドリアーノと2トップを組み、その輝きを取り戻しつつあるという。
最近発行された某雑誌のインタビューに応えるエメの言葉からは、かつて自身が黄金期を築いた”浦和レッズ”への思いと未練が伺えたが、そんな彼を見ると、やはりどことなく懐かしく恋しい思いに駆られる。
彼が今後どういうサッカー人生を歩んで行くかはわからないが、願わくばもう一度浦和で、と思ってしまうのは、過去に『浦和の、いや、埼玉の敷居を二度と跨ぐな』という決別記事を書いてしまった自分も、ようやく彼を許す気になったからなのだろうか。
・・・いや、良き思い出は、夢は夢のママでこそ・・・
エメルソン、トゥット、そして達也に永井、あの頃の超個攻撃が今では懐かしいです。
カタール行ってもいろいろと騒がせてくれましたが、ようやく彼本来のいるべき場所に着いたという感じですか。問題児の2人の2TOPなんで息も合いそうですねw
浦和に帰ってきたらまた残念な別れになりそうなのでw・・夢は夢のママでこそ・・にしときたいです^^
でもタイトルとった試合後歌う歴代チャント、エメのチャントはこれからもずっと歌い続けたいですね!
色々と問題の多かったエメルソンですが、本人が浦和にいたことを誇りに思っているのならそれはいいことだと思います。
問題は暢久がエメルソンとどれくらい仲がよかったか…(汗)
おはようございます。
あの頃は永井も達也も、もちろん福田も居て、それでトゥットもいて、その上にエメですから、すごい有力FW過密状態でした。そんなエメが今はあのアドリアーノと組んでいるんですねぇ。
そう、エメの数々のチャントやコールは今でも深く耳にこびり付いていますね。思い出すたびに彼が弾丸のような速さでビッチを駆け回っていた姿が蘇ります。
藤沢雄二さん
おはようございます。
あ、そういう形でレッズで観られる可能性はありますね。確かに暢久とどれほどの仲だったかは不明ですが、元チームメイトとしての仲はあるでしょうから。
問題は、年齢詐称問題で、もしかしたら空港でタイーホなんていう可能性があるらしいので、先ずはそっちが心配ですが(汗)
オレッズさん
おはようございます。
そういえば「エメルソンからの手紙」とか、何度かカタールから日本へ雑誌を通してのメッセージやインタビューもありましたね。その度に浦和への未練を語っていましたね。
それにしても、無名に近い形で来日してあれほど強烈な結果を残す外国人選手は、今後なかなか現れないでしょうね。
エメなんて・・・いなくたって勝てるもの(クスン)
エメの一番の思い出は、マリノス戦で河合のおなかの上で走った(?)ことですかね(笑)
あと、引っ掛けられたら7回転くらいしてましたよね。懐かしいですねぇ
おはようございます。
まさにあの時代のエメは個人技と、そして問題児の代名詞でもあった選手でしたね。
エメって既にカタール国籍になっちゃってますから、ブラジル代表は難しいかもしれませんが、もしかしたらJリーグに復帰する可能性は十分ありますよね。それがもし敵としてなら、その時は勿論絶大なブーイングで迎えてやりましょう。
おけんさん
おはようございます。
彼がコロコロ転がる理由は、ファールを取って貰うためとか、勢いありすぎての事とか、はたまた怪我しないために流れに身を任せて転がるとか、色々言われていましたね。
今となっては、そんな彼のスピードが懐かしいです・・・
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